注意:架空鉄道「西伊豆鉄道」は創作物であり実在しません。

西伊豆線の優等列車の歴史

    西伊豆線では各駅に停車する普通列車の他に、優等列車が運転されていますが、今回はその歴史についてまとめていきます。

    西伊豆線の開業と急行列車

    西伊豆線では開業当初は「急行」が3往復設定され、うち1往復は沼津駅から国鉄東海道線に直通し、準急(後に急行)「東海」と併結して東京駅まで運行していました。国鉄直通急行列車には「西伊豆」、線内完結の急行列車には「安城」、「波勝」と沿線の岬名からとった列車名がつけれられました。乗車には急行券が必要で、車両は直通急行には国鉄165系、線内完結急行にはオールボックスシートの急行形車両120形が使用されていました。停車駅は沼津・伊豆戸田・土肥・伊豆田子と伊豆田子から伊豆松崎までの各駅。

    1968年6月のダイヤ改正で伊豆松崎~石廊崎間が延伸開業すると、急行の運行範囲も石廊崎まで延長されましたが、延長区間は各駅停車の設定となりました(伊豆田子~石廊崎間のみの乗車は急行券不要)。

    西伊豆鉄道120形
    1968年6月6日 ダイヤ改正 路線図

    1968年6月のダイヤを見ると、下り(石廊崎方面)は午前中昼前に2本と午後昼過ぎに1本、上りは午前中昼前に1本、午後昼過ぎに2本と観光客向けの設定となっていることが分かります。国鉄直通である急行「西伊豆」は東京~沼津間を、下りは急行「東海2号」と、上りは急行「東海3号」と併結して運転されていました。

    列車名/駅名沼津伊豆松崎石廊崎
    西伊豆(にしいず)
    ※国鉄東海道線直通
    (東京08:30発)10:30発≫
    (東京18:58着)16:45着≪
    ≫11:40着
    ≪15:35発
    ≫12:15着
    ≪15:00発
    安城(あんじょう)11:30発≫
    15:45着≪
    ≫12:40着
    ≪14:35発
    ≫13:15着
    ≪14:00発
    波勝(はがち)13:20発≫
    13:05着≪
    ≫14:30着
    ≪11:55発
    ≫15:05着
    ≪11:20発
    1968年6月改正時点の急行ダイヤ

    急行の増発と停車駅追加

    1977年4月のダイヤ改正では急行の増発と停車駅の追加(重寺淡島口・伊豆三津・東古宇が追加)が行われて、合計5往復の運転となりました。列車名は以前の3種類に加えて「翠光(すいこう)」と「黄金(こがね)」が追加されました。

    さらに1990年3月には1往復が増発され、6往復の運転となりました。列車名は上下で異なり、上りが「夕陽」、下りが「燈明」と名付けられました。「燈明」は夕方の帰宅時間帯に設定されていたため、今では各社で運転されている通勤ライナー的な立ち位置に似ています。

    1977年4月23日 ダイヤ改正 路線図

    西伊豆線と急行列車の利用客減少

    1990年代半ばになると経済状況の変化や娯楽の多様化の影響もあり、沿線の観光客数が減少傾向に転じます。また、この頃になると西伊豆線と平行する国道136号線の整備が進み、沿線の移動手段としてのシェアも自動車に奪われつつありました。これらの理由から西伊豆線全体の利用客数が減りつつあり、これに加えて以下のような急行列車によるイメージ低下も西伊豆線の利用者減少に起因していると考えられました。

    急行形車両120形の老朽化

    開業より使用していた120形は1994年の時点で製造から30年近く経っており外装・内装共に老朽化が進んでいました。また、伊豆半島東部を走る伊豆急行線では1985年に「リゾート21(伊豆急行2100系)」、1990年に「スーパービュー踊り子(JR東日本251系)」などの新型車両が登場しており、120形がそれらの車両に比べると見劣りしていたことも否めませんでした。

    一部区間では急行列車が普通列車の補完として運転されていた

    西伊豆線の東古宇以南では1時間当たり1~2本の列車が運転されるようにダイヤが組まれていましたが、急行列車もこの1~2本に含まれており、通過駅では結果的に本数が減少してしまう状況でした。また、急行列車の乗車には急行券が必要であったことで、仮に急行停車駅利用者であっても、この列車を避ける方が多数いたようでした。

    急行券の恩恵が薄い

    急行列車は乗車券の他に急行券が必要でしたが、全車自由席のため、急行券を購入しても着席保証はなく、座席もボックスシートであったため、普通列車に比べてグレードが高いということはありませんでした。また、線形が良くない西伊豆線では普通列車に比べて格段に速達性を確保できているかというとそうでない部分もあり、その面においても急行券の追加購入の必要性に疑問を持っていた方も多かったと考えられます。

    伊豆急行2100系(出典:裏辺研究所)
    JR東日本251系(出典:裏辺研究所)

    国鉄直通廃止と新急行列車の運転開始

    1996年3月のダイヤ改正では国鉄直通急行「西伊豆」の併結相手である急行「東海」の特急化が行われましたが、利用者が低迷していた「西伊豆」はこの改正で廃止となってしまいました。

    一方で先述のような理由から西伊豆線の改革の一環として新しい優等種別の運転を開始することになり、同じく1996年3月のダイヤ改正で「新急行」が2往復設定されました。「新急行」は新しい優等列車の模索と試験的な要素を兼ねており、特徴は以下の通りとなっています。

    新型車両130形を使用(120形からの改造)

    車両は120形を改造した130形を使用しています。改造内容としては1~3号車はボックスシートから転換クロスシート化、4号車はリクライニングシート化、側面窓の固定化(4・3号車のみ)、室内化粧板の貼替えなどが行われ、新規製造ではないものの時代に見合った接客設備に改造されました。外観塗装も明るいものに変更し、新しい優等列車であるアピールとしました。

    料金形態と座席指定

    従来の「急行」では全車両において自由席で、乗車券の他に急行券が必要な設定でしたが、「新急行」では1~3号車は乗車券のみで利用可能な自由席、4号車を追加料金が必要な指定席としました。こうすることで普通列車の補完及び着席需要双方に対応できるようになりました。

    通過運転区間の縮小

    「新急行」では列車本数が比較的多い沼津~東古宇間のみ通過運転を行い、東古宇~石廊崎間は各駅停車としました。結果として同区間の「急行」が通過していた駅では停車本数が増え、利便性が高まりました。

    西伊豆鉄道130形
    1996年3月16日 ダイヤ改正 路線図

    特急列車の運転開始

    「新急行」の運転が好評だったことから、2001年5月のダイヤ改正では後継種別である「特急」の運転が開始されます。車両は展望ラウンジや特別指定席「スーパーシート」を備えた、完全新製の特急形車両500形「ブルーエクスプレス」を使用。

    基本的な運行体系は新急行と同様ながらも停車駅が一部見直され、利用者が極端に少ない雉ヶ尾と舟山は通過設定。また、時間短縮による宣伝効果のために、土肥~堂ヶ島を通過運転する便が下り1便のみ設定されました。

    その後も新駅開業やダイヤ改正の都度、停車駅の見直しがなされて現在に至っています。

    西伊豆鉄道500形
    2001年5月19日 ダイヤ改正 路線図